呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


(やっぱり……あなたはクリス様? だけど、瞳の色が違うのはどうして?)
 戸惑っていると、背後から突然声を掛けられる。
「エオノラ!!」
 女性の声だったのでシュリアかと思って振り返る。と、たちまちエオノラの表情は凍り付いた。


 声を掛けた相手はアリアで、愛らしいフリルがたくさん付いた桃色のドレスに身を包み、胸元にはペリドットのブローチが輝いている。編み込んで結い上げられた髪にはエオノラと同じデビュタントを表すラペットが付いていた。

「こ、こんばんは、アリア。あなたも今日の舞踏会には来ていたのね」
「ええそうなの。まさか社交界デビューがエオノラと同じ日になるなんて。私、とっても嬉しい!」
「そう。社交界デビューおめでとうアリア」
「エオノラもおめでとう。今日のドレス、大人びていて素敵だわ。私もそういう服装にすれば良かったあ。なかなか髪型が決まらなくて、リックと早く会場に着いていたのに化粧室で何度も直していたのよ」
 未だ髪型に納得がいっていない様子のアリアは手袋を取って編み込みに手をやった。

「髪型が決まらないのも不満だけど、リックにも不満があるわ。だって彼は一曲目のダンスを踊ってすぐに帰っちゃったの。どうしても外せない用事があるらしくて……。私のエスコートがまだ残っているのに一人で先に帰ってしまうなんて酷いわ!」
 アリアは頬を膨らませてぷりぷりと怒る。

< 149 / 200 >

この作品をシェア

pagetop