呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 ――十歳のお誕生日おめでとうエオノラ。いつかあなたが必要になるかもしれないものを贈ります。
 その後に続く内容を読んで見るものの、気になるところは特になかった。
 エオノラは便箋から顔を上げると首を傾げる。
「大人になればたくさんの装飾品が必要になるから宝石箱を贈ることは理解できるけど、いつか必要になるかもしれないってどういう意味かしら?」
 訝しんでいると、振り子時計の時計が鳴り始める。
 意識を引き戻して時間を確認すると、あっと声を上げた。
「いけない。そろそろ行かないと」
 手紙の束を集めて整えると、宝石箱と一緒に自室へと運んだ。


 エオノラは机の引き出しに大切なものをしまう習慣がある。手紙をしまうために手を掛けると、中にはカメオのブローチ――リックから初めて贈られた品がころんと顔を出した。
 彼から贈られた品は片手で数えるくらいしかなかったが、すべてイヴに処分してもらったはずだった。

 しかし、このブローチだけはエオノラが心から大切だと思うものをしまう引き出しの中にしまっていたので、彼女は躊躇った或いは見落としてしまったらしい。

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