呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


 毎日、微塵も怖がらず平気そうにしている顔を見ていると信憑性が増してくる。
 それが分かった途端、長年心の中にあった蟠りがスーッと消えていった。
 ずっとこの悍ましい姿と噂が誰かを傷つけるのではないか。誰かに罵詈雑言を浴びせられて傷つけられるのではないかと怯えていた。
 好きで呪われてこんな姿になったわけではないのに否応なしに拒絶されるのが辛かった。

(だが、エオノラ嬢は恐れずに私の目を見て話してくれる。愚直なまでに誠実な言葉を掛けてくれる)
 普通の人からすれば些細なことなのかもしれない。だが、今のクリスにはそれがとても嬉しく幸せだった。
 自然と笑みが零れたところで、クリスはハッと我に返って起き上がる。
「……って、あの女に絆されてどうするんだ」
 クリスは後ろ首に手を当てて苦笑した。
「まあ? 王族以外の者と面と向かって話をするなんて五年ぶりだから。私の顔を見ても平常心を保てる者も初めてなわけだし……」
 どうして自分に弁解しているのかクリス自身も分からない。
 変に心がむず痒い気持ちになったのでぶんぶんと頭を振る。
 やがて、クリスは真顔になった。

< 82 / 200 >

この作品をシェア

pagetop