呪われ侯爵の秘密の花~石守り姫は二度目の幸せを掴む~


「……ク、リス様」
「たどたどしいな。もう一度」
「クリス、様」
「練習だから恥ずかしがる必要ないぞ」
「申し訳ございません」
 それから暫くはハリーに『クリス様』と名前を呼ぶ練習をさせられた。

 最初は気恥ずかしくてなかなか口にしづらかったが、繰り返していくうちに『クリス様』と呼ぶのにも慣れてきた。
「大分、板についたみたいだ。これからはそう呼んであげてくれ。その方がクゥも喜ぶし。ほら、尻尾が揺れているだろう?」
 ハリーがにやにやとしているのでエオノラも彼の方を見る。
 すると、凜とした気品あるオーラを醸し出しながら座っているクゥの尻尾が元気よく左右に揺れていた。
 本人も気づいていなかったようで、ハリーに指摘されて初めて後ろを振り返り、揺れている尻尾を見て慌てて前足で封じている。
「相っ変わらず素直じゃないな」
 ハリーはクゥを揶揄うとカップに口をつける。

 その後、美味しいフルーツタルトに舌つづみを打ちながら、二人は他愛もない話をした。話を聞いているとハリーはクリスよりも三つ年上で物心ついた頃からずっと仲良くしているらしい。
 そこでエオノラは背筋を伸ばすと、気になっていたことを質問した。

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