スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜


「絶えず敵国の兵士の悲鳴が響き渡り、戦いが終わった後には地面は真っ赤に――」


「師匠、声に出さずに読んでくれる?」


「いいだろ?我が国の国王、レイバート王が敵を追っ払った見事な策略なんだから」



 レイバート王……冷酷非道で、自分の命を代償に悪魔と契約を交わしているという噂があり、そこから黒き王様と呼ばれる私の国の国王。


 この前の戦いでは敵の陣地に火の海を作り、兵士を全て燃やし尽くしたとか……。

 
 国を守るために戦ってくれるのはすごく有難いんだけど、やり方が惨いというかなんと言うか。


 実際に会ったこともないし、どんな人かは分からないけど、きっと恐ろしい人に違いない。



「こうやって平凡に生きてられるのも、レイバート王のお陰なんだから、感謝の気持ちを忘れちゃいけないよ」


「それはそうなんだけど……」


「おっと。こうもしてられないんだった。残りの仕事も片付けないと、明日の薬草採取に行けなくなる」



 号外をやや乱暴気味にカウンターに投げ置くと、忙しなく動き始めた師匠は、私に小包を手渡してきた。
 


「ルフィア。悪いんだけど、これをセドの所に届けに行ってくれない?」



 いつもなら師匠が買い物次いでに届けに行く薬なのに。


 なんやかんや言ってて、外に出して私に気分転換させようとする師匠に小さく笑う。



「分かった。行ってくるね」



 小包と師匠の小さな優しさを受け取って、私は店を後にした。










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