スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜


 会場の小部屋へと続く垂れ幕をくぐり抜けると、そこにいた人懐っこそうな青年が駆け寄ってきた。



「どこに居たんですか!探しましたよ!」


「用があるから少し席を外すと言っただろ」


「今夜は大事な日だと、あれだけ言って――」



 呆れ顔で言う青年に、男は被せるように吐き捨てた。



「こんな仕来り、俺の代で最後にしてやる」



 そう言うが早いか、ローブを片手で脱ぎ捨てると、黒を基調とし、金糸で細かく刺繍された、質のいい上質な服が顕になった。


 小さく腕に金糸で刺繍された文様に、確かに見覚えがある。


 何だっけと考えたかったのに、そうはさせまいと男は再び私を連れて歩き出す。


 入ってきた所とは別の垂れ幕を上げると、小さな階段が続き、そのまま台座へと上がった。


 台座の中心に置かれた光を集める眩しい玉座の前に、私達は立ち止まった。





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