スキル〖魅了無効〗を獲得しましたが、甘い言葉に溺れたい〜溺愛?何それ、美味しいの?〜



「いいんですか?私なんかが行って。お邪魔になると思うんですが」


 残ったカイルさんにおずおずと聞くけれど、カイルさんもまたにこやかな笑顔を浮かべていた。



「落ち着いている今というタイミングを逃したら、次の視察はいつになるか分かりませんから。計画を実行する、またとない機会ですよルフィアさん!」


「な、なるほど……?」


「思う存分、レイ様と仲睦まじくじゃれあってくださいね」


 レイと同じく楽しそうにしているカイルさんを見て、顔を引き攣らせるしかない。


 冷酷非道の仮面を取るために努力はするつもりではあるけれど、本当の婚約者ではないのに。


 ユツィーに助けを求めるけれど、もう既に遅い。


「厄介な御二方ですね……本当に。ルフィア様、くれぐれもお気をつけて行ってらっしゃいませ」


 聞こえているのかいないのか、ユツィーの言葉にも顔色一つ変えずに、カイルさんは私を優しくエスコートする。


 胸が熱くなる感覚に翻弄されないよう、私は私がやるべき事を考えてカイルさんに促されるように、城の前で待つ馬の元へと向かった。
 
 


< 96 / 237 >

この作品をシェア

pagetop