手が届かない向こうへ
「また明日な」


それが最後に聞いたお兄ちゃんの声。

最後の言葉。

嘘が嫌いだったのに、最後の最後にこんな嘘を残すなんて。

明日なんて来ない…


私とお兄ちゃんは本当の兄弟ではない。

近所の優しいお兄ちゃんと、それを慕う妹みたいな女の子。

周囲から見た私達はそんな関係だった。

六つも年が違うから、告白しても相手にされなかったけど、それでも本当に私はお兄ちゃんが好きだった。


「お前のは単なる恋への憧れとか、兄貴を独占したい妹みたいな気持ちだろ?
でも、もし本気なら、もう少し大人になってからもっかい言え。
そん時はちゃんと受け止めて、真面目に答え出すからさ」


何度目かの告白の時そう言われた。


「今の言葉、絶対忘れないでね!
私、絶対また告白するからね!」


私が顔を真っ赤にしてそう言ったら、お兄ちゃんは笑ってた。

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