囚われて、落ちていく
「お前は、都麦を家の中に閉じ込めたいと思ったことなかったのか?」
「え……?」
天井を見上げたまま言う、刹那。

「誰の目にも触れさせず、自分だけのモノにしたいと思ったことは?」
「は?」

「都麦の周りの人間を、消し去りたいと思ったことは?」
「ちょっ…ほんと、何を……!?」
東矢は信じられない思いで、刹那のジャケットを掴んだ。

「俺は、思ってる」
刹那が東矢に向き直り言った。
瞳の奥まで、底なしの闇のような恐ろしさがあった。

「都麦を誰の目にも触れさせず、自分だけのモノにして家の中に監禁したいって。
更に、都麦の周りの人間全て……殺して消し去りたいって。都麦の周りに、俺しかいなくなるように……」

「あんた……マジで、おかしい…」

「特に……」
更にグッと、東矢に顔を近づけた刹那。

「お前のような輩は、特に消さないとな!」

「━━━━━!!!」
「じゃないと、ちょっとした隙に拐おうとするからな」
「なっ……!!」

「………まぁ、安心しろ。
一度だけ、猶予をやる。
ただ“一度だけ”
二度目はない。
肝に銘じろ!いいな?」
そう言って、東矢から離れた。


━━━━━━━━━━
「じゃあ…もう、会うことないだろうけど……」
瞬作が後部座席のドアを開け、東矢が降りた。
「一条」
運転席に向かう瞬作に声をかけた東矢。

「何?」
「お前の実家が“ヤクザ”って噂があったんだけど、ほんと?」
「…………なんで?」
「だとしたら、都麦は━━━━」
「………んなわけないでしょ?」

「…………だよな。
ごめん。じゃあな…
都麦にも、よろしく伝えて」
「わかった。
…………あ、そうだ」
運転席に向かおうとして、振り返った瞬作。

「ん?」
「嘘はないから」
「は?何が?」
「兄さんの言葉、一つ一つ」
「え?」

「閉じ込めたい、殺したい、猶予は一度だけ。
この言葉全てだよ」
「一条、お前━━━━━」
「兄さんに!
都麦ちゃん以外への“情け”は存在しないからね。
お前が“都麦ちゃんに会う”その時点で、終わるから」

後ろ手に手を振り、瞬作は運転席に乗り込んだ。
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