囚われて、落ちていく
一度都麦をマンションに送り、再びホテルに戻ってきた刹那。

「美波嬢、覚悟できてるよな?」
美波の向かいのソファに腰かけた刹那。

「は?」
「警告、覚えているだろ?」
刹那は自身の頭を指して言った。

【この中から、俺の妻の事は消し去れ】

「できるの?刹那様」
「あ?」
「私を殺したらお祖父様が黙ってないし、なにより奥様に軽蔑されるわよ!」

「お前は都麦を、甘くみている」
「え?」
「この“俺が”惚れた女だ。バカにするのもいい加減にしろ!!」
刹那が、怒りに包まれていく。
少しずつ、黒く重く━━━━━

「まさか……貴方を受け入れたの?」

「あぁ。俺達の愛情を甘くみるな!」

「嘘でしょ?あんなに、取り乱してたのに…!」
心底信じられないというような表情の美波。
美波の中では、刹那は都麦に軽蔑され離婚するだろうと思っていた。
そこにつけこみ、刹那を手に入れようと思っていたのだ。

「理屈じゃないだよ!?
何に変えても傍にいたい、どんな汚い人間でも放れられない、息をするみたいに一緒にいることが当たり前。
そんな愛情……お前にはわからないだろうな」

立ち上がってゆっくり美波に近づく、刹那。
「刹那…さ、ま…?」
そして美波を見下ろし、言い放った。

「さぁ、消え去れ……!!
俺と都麦を引き裂く人間は、跡形もなく消え去る。
これは俺のルールだ」

「お願い…し、ます…許してください…!!
私はただ……貴方が好きで━━━━━」
美波の首を持ち、グッと引き上げた刹那。

美波の細い首は、あっという間に絞まっていく。


そしてわずか数分で、美波は絶命した。

「はい、終わり。瞬作!」
「うん…あとは、始末しておくよ」
瞬作が無表情で言って、美波を抱えてその場を去った。


そして刹那は、武之助に呼ばれ料亭に来ている。

一番奥の離れ。
そこには、美波の祖父である警視総監と武之助がいた。

「なぜ、美波を殺った?」
拳を震わせて刹那を睨みつける、長谷部。

「俺の警告を無視したからだ。
暗黙のルールを破ったから」
刹那は長谷部を真っ直ぐ見て言った。

「どうする?警視総監。
刹那を“正当に”捕まえるか?」

武之助も長谷部を見据え言った。

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