囚われて、落ちていく
「若、お疲れ様でございますっ!!」
組員達がズラッと並び、挨拶をする。

そしてデスク前に、笹原がいた。
「若、おはようございます」
「笹原?お前、仕事は?」
美波が亡くなったので、一花組に戻ってきた笹原。
その後は、刹那の不動産会社の秘書として働いている。

「頼まれていたのを、お持ちしました」
「あー、サンキュ」
細長い箱を渡す、笹原。

「何?それ」
瞬作が不思議そうに見て言った。
「ん?都麦に、プレゼント」
「ふーん。この箱の形って、ネックレス?」
「そ!ネックレスっつうか“首輪”みたいなもんだ」

「は━━━━??
兄さん、何言ってんの?」
瞬作が刹那に向き直る。

「なんかさ…最近、歯止めが効かねぇんだ。
都麦が受け入れてくれてから……
変な自信みたいなのがあって、何をしても許してくれんじゃないかなって!」
刹那は、ネックレスの箱をなぞるように触れながら言った。
「なんかあるの?そのネックレス」

「GPSがついてる」
「………」
瞬作はこれ以上、何も言えなかった。


「なんで、こんな物作ったの?」
仕事に戻る笹原を追いかけ、声をかける瞬作。
「若の命令ですので」
笹原は無表情で瞬作を見て言った。

「だからってこんな……
都麦ちゃん…本当に自由がなくなってくじゃん……」
瞬作は肩を落とし壁に寄りかかって、呟くように言った。
「………」
「何?」
笹原が真っ直ぐ自分を見つめてくるので、瞬作は目線だけ笹原を見た。

「瞬作さんは、都麦様が本当に好きなんですね……!」

「は?」
「そんな表情されてますよ」
「だったら何?」
「いえ…若も、酷い人ですね」
「なんだよ、急に」
「瞬作さんの都麦様への気持ち、若が気づいてないわけがない。
それをわかってて、貴方を自分につけてるからです。
だって、辛くはないんですか?
目の前で好きな女性が、自分以外の男性と幸せそうにしている姿を見ること」

「そうだな。
でも、兄さんから都麦ちゃんを奪うなんてできない。
そんなの……一生の“恐怖”を背負うことになる。
俺も都麦ちゃんも」

「都麦様が、助けを求めてきたら?」

「は?」
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