囚われて、落ちていく
(凄い人だ。
ガタイのいい波田さん相手に、片手で手を捻りあげている。笹原さんは、どちらかというと細い体型なのに)

「………って、そんなことより早く止めなきゃ!!
でも、どうすれば……あ!刹那さんに電話!」
都麦は咄嗟に、刹那に電話を入れた。

『つむちゃん?どうしたの?』
「あ!刹那さん!!助けて!!早く笹原さんを止めなきゃ!」
『は?都麦!?大丈夫!?
とにかく行くから、場所を教えて!』
少々パニックになっている都麦。
刹那は場所を聞き出し、向かったのだった。


数分後、刹那が現場に着く。
笹原は波田の胸ぐらを持ちあげていて、都麦は腰が抜けたようにへたりこんで、笹原に呼びかけながら必死に止めようとしていた。

「都麦!!」
「あ…刹那さん!お願い!笹原さんを止めて!」
都麦の元に駆けつけて跪くと、都麦が刹那のジャケットを握り必死で懇願してきた。

「都麦!落ち着いて。何があったの?」
刹那は都麦の頬を両手で包み込み、目線を合わせて語りかけるように言った。
都麦は一度深呼吸をして、状況を説明した。

それを聞いた刹那の雰囲気が、一気に黒く圧迫された。
都麦はここで、刹那に助けを求めたことを後悔することになる。

「都麦、危ないから瞬作と一緒に車に乗って待ってて」
「え……?刹那、さん…?」
「瞬作、早く連れていけ」
そう言うと、スッと立ち上がり煙草を取り出した刹那。
「都麦ちゃん、こっち!」
瞬作に支えられ立ち上がった都麦は、そのまま車に乗せられた。

「絶対、出ちゃダメだからね」
瞬作がそう言うと、ドアを閉めた。

窓から刹那を見る都麦。
刹那は煙草を吸い出して、空に向かって煙を吐いた。

煙草を吸う刹那を初めて見た、都麦。
「綺麗…」
なぜかそんな言葉が出てきた。

しかしすぐ、あまりの刹那の恐ろしさに身体が無意識に震え出した。

一切無駄のない動きで、笹原に代わり胸ぐらを掴み持ちあげた。
そしてまるでゴミを捨てるように、波田を地面に放り投げた。

「お前、俺が誰だかわかるよな?」

波田を見下ろし、睨みつけ言った。
< 55 / 58 >

この作品をシェア

pagetop