囚われて、落ちていく
暗部
大臣のいるホテルに着いた刹那と瞬作。

刹那が早川の部屋に向かう。
早川がいつも刹那と密談する時に利用する部屋だ。
早川の秘書が応対し部屋に入る。早川は刹那を認めると立ち上がり頭を下げた。
刹那より二回り以上も年上で、国を背負っている大臣が刹那に頭を下げる。

早川の秘書達は、この光景に異常さを感じていた。

刹那がドカッとソファに座ると、早川も腰かけた。
「一条様、お忙しい中いつもありがとうございます」
「ん。で?」
「はい。また護衛をお願いしたく……」
「あのさ!」
「はい」
「俺達が誰がちゃんとわかってるよな?」
「は?」
「俺達はあくまでも“裏の”人間。だから、やり方が正当じゃない」
「もちろん、存じております」
「その俺達に、護衛って……お前くらい偉ければ、SPを雇う方がいいだろ?」

「しかし、今回は権藤組が関わっていて……」
「そう。だったら、権藤が消えればいいってことだな?」
「え……そこまでしなくても……」
「は?お前が“俺に”頼む。その時点で、相手は命がないも同然だ。例外はない」
「━━━━━━!!!
と言うことは…………」
「今までの奴等も、もう…いない」

「…………」
刹那の思いもよらぬ言葉に、思わず口をつぐむ早川。

「俺に護衛を頼むとこうなる。
だから聞いたんだ。
俺達が誰かちゃんとわかってるのか。と」

「はい…」
「だったら、いい。
瞬作、煙草」
「ん」
瞬作から煙草を受け取り咥えると、瞬作が火をつけた。
そして天井を見上げ、煙を吐いた。
それを黙って見つめる、早川。

早川からすれば、息子同然の小僧。
なのに凄まじい貫禄があり、恐ろしい雰囲気を醸し出した“魔王”のようだ。

部屋の中がシーンと静まり返っていて、張り詰めている。早川や秘書達の緊張が伝わりそうな程だ。

「あ、そうだ。一条様、ご結婚おめでとうございます!後日、お祝いの品をお贈りしたく━━━━」

すると天井を見上げていた刹那が、早川に向き直り鋭く睨んだ。
「必要ない」
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