発作でさえも、
自分に嫌気がさしていたそのとき、ピンポーン、と軽快にインターホンが鳴り響いた。


真夜中、午前2時30分。来客なんてあるはずのない時間、いったい誰が来たというんだろう。


もしかして、と淡い期待を抱いてしまいそうな自分に呆れる。そんなはずない。だって結局伝えられなかったんだから。


でもこんな時間に来る人なんて他に想像がつかなくて、沸き立つ甘い鼓動が治まってくれない。


ポコン、LINEの通知音にさらに心臓は高鳴る。



『まだ起きてんならドア開けて』


なんで、どうして。


感情が言葉に変換できなくなる。それはきっとはち切れそうなほどいっぱいいっぱいに膨れあがった気持ちのせい。もうそろそろ決壊寸前で、自分では押しとどめることもできない。この発作は自分では治せないから。治せるのは朝里くんしかいない。


形だけ寝ていた体勢を起こして玄関へと向かう。表情を取り繕う余裕すらなく、逸る気持ちに足を乗せて、勢いそのままにドアを開けた。
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