政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
まさか告白をされるなど思ってもいなかったから、顔が歪んでいくのを自分でも感じていた。
松堂君はずっと私を思ってくれていた。それを知らずにこうやって会うことは彼を傷つけることにもなる。

どうして、気付かなかったのだろう。
どうして…―。

「もちろん日和が幸せならそれでいいと思ってたし、その幸せを壊したくないって思ってた。けど辛そうな日和を見て俺だったらもっと笑顔にできるのにって」
「…うん。でも私は本当に後悔してないんだよ。結婚は全く後悔してない。だから…ごめんね、松堂君の気持ちに応えられない」
「うん、わかってる。今日話してそれが伝わってきた。だから…ごめん、本当は告白するのやめようって今日会って決めていたんだけど」
「…」
「ずっと好きだったから最後に伝えたくなった。困らせてごめん」

 眉を八の字にして悲しそうな顔をする彼に胃の奥がずっしりと重くなった。
同時に私まで泣きそうになった。

「ううん、私こそ気づかなくてごめんね。でも本当に結婚は後悔してないの。これからも楓くんと二人で私たちの家庭を作っていきたい」

松堂君はいつも通りに柔らかく笑った。

「日和、」
「…っ…楓君?!」

 近くで私の名前を呼ぶ声が聞こえた。松堂君も驚いたように振り返った。
松堂君の背後に楓君が近づいてくるのが見えた。
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