政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
♢♢♢

 翌朝起きると既に彼女の姿はなかった。

 リビングルームに行くと、普段通りにエプロンをした彼女がキッチンに立っている。
朝食を作っているようで俺を見るなり「おはよう」と笑顔を向ける。

「おはよう。朝食ありがとう」
「ううん、今日も寒いね」

 にこやかに笑いながらテーブルに朝食を並べる日和に何故昨夜あのような発言をしたのか訊きたかったがまるで昨日のことなどなかったかのような振る舞いに何も聞けなかった。

 もう少しで日和の誕生日もあるし、クリスマスもある。
12月は非常に忙しい時期だ。でも日和との時間を優先させたいと思うのは自然な事だ。
誕生日は絶対に時間を作るしその特別な日は彼女に喜んでもらいたい。

「日和、誕生日欲しいものはない?」
「欲しいもの?ない…よ」

 一瞬何か言おうとしたのを飲み込んだように見えた。
何か欲しいものがあるのだろうか。それをしつこく聞いても彼女は何もないといった。
誕生日まであと少しだ。





< 209 / 231 >

この作品をシェア

pagetop