エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
柔らかな唇が何度も角度を変え重なり合う。これが恋人とのキス……と感慨深く感じる間もなく、彼の熱い舌がゆっくりと侵入してきた。抗わないよう、おそるおそる唇を開けて迎える。内側を撫でられ誘うように舌を絡められ、私は震えた。
これからすることはわかっている。覚悟もできている。
お嫁さんになったんだもの。
この人の奥さんになったんだもの。

「怖いことはしません」

唇を離し、低く彼は言った。

「大事にします。だから、もう少し力を抜いて」

優しく真摯な声音に、私は涙ぐんだ目を閉じ、こくんと頷いた。

「……はい」

腕を彼の首にまわして、自ら身を寄せるのは緊張した。だけど、私の気持ちを伝えるにはされるがままではいけない気がした。
あなたを信頼している。これからされることは嫌なことじゃない。
緊張しているから、顔は強張ってしまうし、手は震えてしまうけれど、どうかやめないで最後まで続けてほしい。

「芽衣子」

彼の唇が瞼や頬に落とされる。耳朶に触れられるとびくんと身体が跳ねてしまった。そんな私を優しく見つめ、彼は再び私の唇を奪う。
熱いキスに翻弄されながら、彼の髪や頬を撫でた。何度も何度も。
そうすることで、私がこの結婚を嬉しく思っている気持ちが余すところなく伝わればいいと願って。
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