エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
芽衣子は俺との結婚に了承してくれたが、それは父親の薦める相手だったからだ。恋ではない。

彼女の心はまだその男のもとにあるのではなかろうか。
高校大学と、青春時代にずっと想いを捧げてきた相手。その男とは恋が実らなかったのだろうか。家族に反対されたのだろうか。その男はもう芽衣子の傍にはいないのだろうか。

芽衣子には、他に好きな男がいた。
過去のことだと割り切ればいいのかもしれない。芽衣子はもう俺の妻で、俺は毎晩のように彼女を抱いている。彼女が許してくれるのをいいことに、言葉にできない愛情を抱くことでぶつけている。だけど、もし芽衣子に好きな男がいるなら、行為そのものが意に添わぬものかもしれない。

芽衣子と話した方がいい。
芽衣子の想い人について。今はどこにいるのか。もう会う機会はないのか。
本当に俺との結婚生活を送り続けていいのか。
もし、芽衣子がその男との未来を望んでいるなら、俺は芽衣子を見送る覚悟がある。義父の円山先生と義兄の鉄二には俺が話をつければいい。初めて俺から惹かれた女性だ。彼女のためなら、俺はなんだってできる。

とはいえ、こんなに男らしく勇ましい覚悟を思い浮かべながら、いざ芽衣子の顔を見たら俺は何も言えなくなってしまった。ためらって、尋ねる言葉が出てこない。
芽衣子にこの話をしたら、少なくとも俺たちは今までどおりの幸福な関係を維持できなくなるだろう。芽衣子にとっては仮初の幸福だったとしても、俺には真の幸福なのだ。手放すのは身を切るよりつらい。

いつ、言おう。今日こそ言おう。
いや、もう少しだけ様子を見て。彼女から話してくれるまで待ってもいいじゃないか。
駄目だ。やっぱり俺から言うべきだ。

そんなふうに二転三転と考えていたときだった。芽衣子に妊娠を告げられたのは。


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