エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「駿太郎さんと子どもと、三人で生きていきたい」

その言葉に雷に打たれたように感じた。
芽衣子はちゃんと俺との未来を見据えている。俺と生きようとしてくれている。ずっと何年も好きだった男ではなく、俺と子どもとの家族の未来を考えてくれている。

それなのに、俺はうじうじと何を悩んでいたのだろう。
芽衣子と子どもを守って幸せにする。それができれば万々歳じゃないか。それ以上は望むべくもない。俺は結局自己中心的に、自分の幸福ばかりを考えてきたのだ。

「芽衣子、ありがとう」

ようやく彼女の顔が真正面から見られた。ここ数日、目をそらし、どこかで避けていた彼女に向かい合う覚悟が決まった。

「きみが元気な赤ちゃんを産めるように俺も頑張るよ。なんでも頼ってほしい」
「駿太郎さん」
「きみと産まれてくる子どもと、三人で仲良く暮らして行こう」
「はい」

芽衣子が微笑み、ぎゅっとつぶられた目から涙がこぼれた。
腹をくくろう。芽衣子を愛し、生涯不安な顔はさせないようにしよう。過去の想い人なんか忘れるくらい大事にして、たくさんの愛で包もう。

腕を伸ばし、華奢な身体をそっと抱き寄せる。
ベッド以外で彼女と触れ合うことはあまりなく、今更なのにものすごく緊張した。
芽衣子は顔を俺の胸に押し当て、じっとされるがままになっていた。ほおと安堵したような吐息が聞こえる。
この愛しい女性を、俺の人生をかけて守っていこう。

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