もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい

✰✰回想


そう、あの日
アメリカに到着した私は
真っ直ぐに伊織の会社へと向かった。

伊織の会社は、
ニューヨーク街の高層ビルの一角にある。

伊織が社長で
一緒に企業したカルロスさんが副社長。

私が伊織との関係を終わらせる
きっかけとなったエマちゃんの
お兄さんである人。

後は、事務方や営業等の人達がいる。
みな優秀で少人数だが
安定した企業のようだ。

その上、
カルロスさんのお父さんが
会社の顧問弁護士をしている
力もあり顔も広く
多くの人々に知られている
弁護士さんで
売上にも貢献してもらった
と伊織から聞いていた。

エマちゃんだけのせいでは
決してないのに·······

私からの連絡が途絶えた
伊織は、かなり落ち込み
立ち直るのに時間がかかったらしく
カルロスさんのお父さんが
責任を感じて?か
仕事で伊織を忙しくしたようだ。

その甲斐もあって
今の会社があると伊織は、
話してくれた。

あの時······
弱く無知な私は、
逃げたのだ。

だから、今は逃げない。
まぁ、気持ちに気づいたのは
結月のおかげだけど。

総合受付で、名前を伝え
伊織の社名と本人に
面会したいと伝えると

直ぐにどこかに連絡をしてくれて
受付の人から
【こちらでお待ち下さい。】
と、言われて
ソファーに腰掛けて待つ。

キャリアケースを引いた
私は、みなさんにどんな風に
見られているかな·····
なんて、思っていると
【つむぎさんですか?】
と、男性から
【はい。秋元 紬と申します。
相馬 伊織は、不在ですか?】
と、訊ねると
いきなりその男性に抱きつかれて
【きゃーっ!!】
と、叫んでしまうと
【ごめんなさい。ごめんなさい。】
と、何度も言いながら
【待って、ああ、一緒に上がろう。】
と、口早に言うと男性は、
私のキャリアケースを
取り歩きはじめる。

えっと思っていると
受付の女性が
手で、どうぞとしながら
笑っていたから
大丈夫かな?
と、思い男性について行く。

男性は、携帯で話しながら
エレベーターの扉を開いて待って
いてくれた。

頭を下げて乗り込むと
にっこり笑ってくれたが
まだ、彼は携帯で話をしていた。

エレベーターが止まると
見晴らしが良い。

伊織の会社の受付の方が
会議室に案内してくれた。

男性は、外で話していた。

会議室の椅子に座ると
COFFEEが出てきて
そういえば緊張していたからか
何も飲んでないと
思い口にすると
< コンコン >
先程の男性が入ってきて
【挨拶ができていませんでした。
 カルロスと言います。】
【ああ、あなたが。】
と、言い
【はじめまして。】
と、改めて頭を下げると
【あなたや伊織には、
妹が、申し訳ないことをしました。】
と、言うから
【妹さんのせいではなく
私が無知で弱かったのですから
もう、気にしないでください。
それより、私が入院している間
伊織を不在にさせてしまい
申し訳ありませんでした。】
と、言うと
【日本へ帰国するときは
あなたの事をかなり心配していました。
でも、覇気もあり
しっかりしていました。
だけど、日本から戻った伊織は
屍のようです。
やる気もなく
全てに投げやりで
彼を見たら、
あなたもきっと、ビックリ
することでしょう。】
と、言った。

しかばね······

なげやり······

  カルロスさんから言われた言葉を

         噛み締めていると

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