灼けるような恋の先。
ドアを開けた瞬間に香る灯の香り。
6年経ってもあの日から何も変わらない灯の部屋に、匂いに私は泣きたくなるのをぐっと堪えた。
「一応掃除機かけたり換気したりはちょこちょこしてたんだけどなー、物はやっぱ動かせなかった」
笑ってそう言う晄の手はかすかに震えてて、灯の死を受け入れるのが怖いのは私だけじゃないんだと安心した。
部屋を見渡すと灯の匂いに包まれると、あの日に戻れたみたいな不思議な感覚ででもこの世にはもう灯はいないんだと思うとどうしようも無い苦しさが襲う。
「懐かしい、灯の匂い。
見てよ、これ中学の時の制服。
なんでこんなん持ってきてんだろうね?」
クローゼットを開けて笑う私。
高校からシェアハウスしたのに中学の制服持ってくるなんて変だわ。
でもそんなとこが灯らしいけどね。
「見ろよこれ!エロほーん!」
「うわ、最低晄」
「持ってんのは灯だから仕方ねーだろー!
へー、あいつこういう趣味かぁー!」
苦しくてたまらないと思っていた遺品整理。
それがまさかこんなに懐かしい気持ちでできるなんて思ってなかった。
でもきっとこんな気持ちでいられるのは、同じ思いを共有できる晄がいるからなんだろうな。