花吹雪~夜蝶恋愛録~
やっと想いが言葉にできた。

それを発して、どこか楽になった自分がいる。


トシは驚いたように目を丸くしていたが、さくらはもう何も隠すことがないとばかりに覚悟を決めて鼻をすすった。



「だから、ユカとのこと、仕事だってわかってても、悲しかった」


トシはさくらの告白に、何も言わずに目を伏せる。



「でもさ、考えてみたら、ユカとのことがなくたって、私とトシは生きる道が違うでしょ? トシはこの世界で成り上がりたい。私は保育士になりたい。その道は、絶対に相容れない」

「………」

「だから、今はこれでよかったと思ってる」


言い切ったさくら。

後悔はない。


しばらくの後、トシはやっとのことで口を開いた。



「佐倉は俺にとって、こんな世界の中で唯一気を許せる同郷の仲間だったっていうか。他の誰が裏切ったって、佐倉は絶対に敵にはならないっていう安心感みたいな? それに佐倉が自分の夢に向かって頑張ってることで俺も勇気もらってたっていうか。勝手だけどさ」

「ほんと勝手すぎだよねぇ」
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