君との想い出が風に乗って消えても



 夏休みに入って一週間が経った。



 今日は加恋ちゃんと一緒に秘密の場所に行く日。


 僕は加恋ちゃんと約束している待ち合わせ場所の公園にいる。


 僕は緊張していた。

 加恋ちゃんと初めて学校以外の場所で会う。

 そのことはとても嬉しい。
 けれど、それに比例するように緊張感も増している。

 それだからか、手に汗が噴き出てきた。

 手だけではない。
 真夏の暑さも影響して全身も汗が噴き出てきた。

 どうしよう、このままでは加恋ちゃんに汗だくの男子だと思われてしまう。

 僕は噴き出てくる汗をなんとか抑えようと必死だった。



「優くん‼」


 そのとき、加恋ちゃんが待ち合わせ場所に来た。


「ごめんね、優くん、待った?」


 ……‼


 僕は加恋ちゃんの姿に目を奪われた。


 淡い水色のふわっとしたワンピース。

 麦わら帽子。

 小さくてかわいい花のイヤリング。

 全体は細かい網のような、そして真ん中には大きなリボンが付いたかわいいバッグ。

 足の甲のあたりにかわいい花が付いたサンダル。


 僕は加恋ちゃんのその姿に言葉が出なかった。


「優くん……?」


 ……‼


 加恋ちゃんに見惚れ過ぎていた。
 ぼーっと立っているだけだったことに気付き。
 ハッとした僕は何か話さなくてはと思った。


「……加恋ちゃん……可愛い……」


 そう思った僕の口から出た言葉は。
 今思っている気持ちだった。

 それを言った後で恥ずかしくなった僕は顔が熱くなってきた。


「優くん、ありがとう」


 加恋ちゃんは、いつものようにとびきり可愛い笑顔を見せた。


 僕はそんな加恋ちゃんの笑顔にのぼせそうになった。


「じゃっ……じゃあ、行こうか」


 僕の今の様子を加恋ちゃんに気付かれたら恥ずかしいので。
 すぐに切り替えて加恋ちゃんにそう言った。


「うん、すごく楽しみ」


 加恋ちゃんは、またまたとびきり可愛い笑顔でそう言った。



 こうして僕と加恋ちゃんは秘密の場所へ向かって歩き出した。


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