ムボウビハート

 「…あらた、離し…、」



「イヤだ。」


言いかけたコトバを遮ったのは、あたしの指をくわえたままの、あらた。


「…ね、リップクリーム塗ってあげる。痛いでしょう?」


なんとか、この場を納めようと、そんな風に提案してみる。


「イヤだ。嫌いなんだよ、俺。ベタベタするから。」


「あたしのは、ベタベタしないヤツだよ。ミントの香りがするの。」


「あぁ、もう、ウルせー。黙れ。」



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