課長と私のほのぼの婚
目玉焼き【1】

課長と私

「新婚さんのメニューってどうなんだろ。やっぱりみんな、凝ったものを作るのかな」


会社帰りにスーパーに寄ったはいいが、冬美(ふゆみ)には何を買えばいいのか分からなかった。

賑やかな売り場には秋の味覚が並んでいる。


「課長の好みは、ええと……」


課長というのは、彼女が昨日式を挙げたばかりの旦那様である。

館林(たてばやし)陽一(よういち)。35歳。株式会社くじらリゾート国内事業部企画課長。

冬美は財務部経理課所属。

部署は違うが、彼は同じ会社に勤める管理職だ。付き合うようになってからも「課長」と呼ぶのが基本であり、結婚したからといっていきなり名前呼びするのは恥ずかしかった。

そもそも十も離れた年上男性と付き合い、しかも結婚するという、年下推しの自分にとって意外すぎる状況に、いまだに慣れないのかもしれない。


「お魚が好きなんだよね。下田のホテルでは金目鯛の煮つけを美味しそうに食べてたっけ」


デートで食事するとき、彼はいつも高級レストランとか、グルメなお店に連れて行ってくれる。

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