課長と私のほのぼの婚

海辺のレストランにて

レストランはホテルの5階にあった。ガラス張りの窓から海が見渡せる、素晴らしいロケーションだ。

冬美と課長は窓際の席に案内されて、向き合って座る。


「ここに来るのは何年ぶりかなあ。相変わらず、いい眺めです」

「そ、そうなんですね」


お昼時のためかテーブル席はほぼ埋まっている。家族連れやカップル、年配の夫婦など客層はまちまちだが、いずれも旅行客のようだ。


「今は曇ってますが、午後からは陽が射すそうですよ」

「なるほど」


何がなるほどなのか分からないが、とりあえず返事をする。なんとなくソワソワして、落ち着かなかった。

こうして正面から向き合い、冬美は急に、館林課長が一人の成人男性であることを意識した。今さらながら、妙なことを考えたりする。

自分たちは傍から見ると、どう映るのだろう。年齢は離れているが、親子ほどではない。やっぱり上司と部下? 兄妹? まさかの友達?


(ていうか、ホテルのレストランで食事って、お見合いみたいな……)


「野口さん。どうかしましたか?」

「いえっ、なんでもありません!」


< 19 / 51 >

この作品をシェア

pagetop