私、あなたの何なのでしょう? 10年目の再会は愛の罠


 翌日、『脇坂総合病院』を訪れた菜々美はまず受付に行ってみた。
受付の女性に名前を告げると、直ぐに採血室へ行くように言われた。
奏佑が言っていた通り、来院予定があるからと準備してくれていたのだろう。

奏佑に妊娠を知られたく無かったが、貧血かどうか調べるくらいなら…と
軽い気持ちで検査室に向かった。

「アルコールにかぶれたりしませんか?」

「手をぎゅっと握って…。ハイ、力を抜いて下さい。」

優しく声を掛けられながら採血は終わったが、検査結果が出るまで小一時間かかるそうだ。


「結果が出たらお知らせしますよ。どちらで待たれますか?」

「では、祖父の病室におりますのでよろしくお願いします。」

結果を待つ一時間もあれば、恒三の部屋でゆっくり話ができるだろう。

わざわざ呼び出されたが、祖父からは何の話だろう。
縁談も遺産の事は、もう勘弁して欲しい。それが菜々美の正直な気持ちだった。


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