私を赤く染めるのは
「ちょっと聞いてるの?」
そう尋ねると視線はスマホからゆっくり私の方へ。
「さっきから碧人くん碧人くんうるせーよ。お前あいつのこと好きなのか?」
冷めた目といつもよりワントーン低い声。
初めて見る煌の険しい表情に私も笑顔が消えた。
「な、何それ。煌が色々聞いてくるから答えたんでしょう。それにさっきから何度も言ってるけど碧人くんは頼れるお兄ちゃんって感じで……」
口から出るのはまるで言い訳のような言葉。
“何に”対してかはわからない。
でも、煌が怒っているのは明らかで、その地雷が明確にならないまま手探りで会話を続ける。
「……そんな話別に聞いてないか。ごめん疲れてるよね」
俯いたままの私に今度は「はぁー」とため息が降ってくる。
「悪い、今のなし。俺何か変だわ。先、リビング行ってるな」
その言葉に顔を上げると、私の隣をすり抜けて行こうとする煌。
私は思わずすれ違いざまに煌のTシャツの裾を掴んだ。
さっきまでの煌は確かにいつもと違った。
けれど、それを“変”なんて言葉で片付けられてもこっちは納得がいかない。
「変って何?」
そう尋ねると今度は眉間にシワを寄せ何かを考え込む煌。