激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす



 震える声は、怯えているように彼の目に映ったのだろう。彼は驚いたように、切れ長の目を見開いた後、スッと細めて私の表情を探る様に 見つめた。


「そうか。俺は忘れていなかった。会いに行くと、約束したことも」
 何もかも失った私は、その優しささえも恐怖に感じた。
「無かったことになりませんでしょうか」
「責任をとってもらおうか?」

吸い込まれそうに情熱的な彼の瞳が近づいてくる。
ああでもごめんなさい。違うの。

 私は何もかも失って、真っ暗な暗闇に、手さぐりで手を伸ばしただけ。
 こんな素敵で優しい人にはきっと相応しくない。傷を守るために誰でもいいからと、手を伸ばしてしまったんだから。

なのに心臓がバクバクと、目覚まし時計のように鳴り響く。私に目を覚ませと言っているように、うるさく鳴り響く。

間違えたのではない。夢であってほしいと逃げていたのは私。
囚われたのは私。最初からこの人に惹かれていたのだ。
この人の香りに――。

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