激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 それでも、昨日あんなに取り乱したのにどんな面下げて彼に会えば良いのか分からず、バスルームでうだうだしていると、ベッドルームから電話をする声が聞こえてきた。

「ああ。ようやく仕事が終わった。さっさと帰りたいんだが、チケットは明日なんだ」

 苦笑する彼の声は、驚くほど柔らかい。
 そんな風に優しい声は、初めてだった。

「一番に会いに行くよ、みどり」

 クスクス笑う声には、愛情が感じられる。
 そして女性の名前。

 私がバスルームにいるのに他の女性に電話するとは余裕というか、私が本命では無いと暗に言われているようだ。
 なんだか此処まであからさまだと、晴れ晴れしい気持ちになれる。
 今更、一夜の関係に胸を痛めるほど純粋でもない。
 ただ、これほどまで優しくされた次の日だから、驚きの方が大きい。

「お土産がチョコレートでいいなんて可愛いな。分かったよ。段ボールいっぱいに買っていこう。クッキー? そんなものでいいのか」

 まだ電話中だったので、気付かれないようにこっそりこっそりと荷物をまとめて電話している彼の目の前に現れた。
 彼は私に気付いて、携帯を手で覆う。

「少し待っててくれ。電話終えたらゆっくりしよう」
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