激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

 私の回りや会社ではバレバレだし、私の保身は考えてくれないのか。
 深いため息と共に、親からも散々な扱いを受けていたことを身にしみて感じれる。
 これで老後は姉ではなく私に面倒を見てもらえると思っているのだから、親ながらに嫌悪しか湧かない。

「私、今回のことは完全な被害者だから。姉にも優希にもそれなりに慰謝料請求するよ」

 これは美麻から教えてもらった呪文だったが、急に母の声色が変わった。

『慰謝料!? 家族内の問題でしょ。何を考えるの。それこそ親戚や周りの人にどう説明するのよ』
「……私にヒステリックに叫ばないで。被害者に何を言っても無駄だよ」
『つまり穂乃花が謝れば許してあげるのよね』


 話にならないと理解して、電話を切った。

 そっか。親的には、昔から我慢を強いてきた私が従順に我慢すれば丸く収まると思っていたのか。
 本当に馬鹿らしい。今まで真面目に生きてきたのが馬鹿に思えてきた。
 結婚式用に溜めていた貯金の、結局は私が入金していた金額ぐらいしかハワイ旅行に使ってないし。
 慰謝料ね。優希は罪悪感から払うかもしれないけど、姉がごねるのが手に取るように分かる。
 お金かけてもいいから弁護士に連絡して直接の話し合いでは会いたくない。
 私を下に見て、馬鹿にしたような話し方をするのは火を見るより明らか。
 慰謝料というか、私に二人が二度と関わらないような契約を結んで欲しい。
 なんでできれば恋愛云々なんてもうどうでもいいから婚約したら他の人を好きにならず我慢してくれと思ってしまう。

 こんなことを考えてしまう辺り、私も姉と同様に性格が歪んでしまっている。ささくれだって荒れているというのも分かる。
 ただ本当にどうでも良くなった今、二人に対しては二度と会わないならそれで許せそうな気分でもあった。
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