激甘御曹司は孤独な彼女を独占愛で満たす

心臓がバクバクと、目覚まし時計のように鳴り響く。私に目を覚ませと言っているように、うるさく鳴り響く。間違えたのではない。夢であってほしいと逃げていたのは私。

囚われたのは私。最初からこの人に惹かれていたのだ。

この人の香りに――。
流されたくない。この人の雰囲気に、この状況に。
そんなに簡単に流されるから、恋人と姉に裏切られるのに。

「あの、私は」
「俺は、美優のすべてが欲しい」

 それはあまりにシンプルで、それでいて信じられない言葉だった。ただただアラームのように心臓が大きく鳴っている。私の意思じゃないぐらい、勝手に鳴っている。

「この身体もなんだけど、心も欲しい」

 強引に引き寄せられて、彼の腕の中に囚われた。
「離れないで、と一晩中人の胸で泣いていた君がほしいよ」
甘い誘惑を吐く言葉。そして魅力的な彼の香り。
こんな自分が嫌なのに、拒否できなかった。
「ますは俺のことを知ってもらおうかな」
「……え?」
「明日、また迎えに行くよ」
ふっと身体が軽くなり、彼がキーケースを取り出す。
いきなりの展開で、どうしていいのか分からず呆然としてしまう。
家に戻ってシャワーを浴びても、彼の香りがずっと記憶から離れてくれなかった。
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