白檀の王様は双葉に芳しさを気付かせたい
「琥白のこと、全面的に信じられるのか? 結婚したら変わる、地位や名誉がある男ほど裏切る。そう言ったのは、ふたばだろ」
「それは……」

「琥白と一緒にいたら、また傷つくよ? ふたばを置いていった母親や、浮気を繰り返した父親。それに、ふたばを道具としか思ってない叔父にだって、ずっと苦しめられてきたじゃないか」

 兄は私の頭を撫でる。

「これ以上、誰かに裏切られて苦しむ必要なんてない。ふたばは、最初から『こうする』って決めてたんだろ? もう十分悩んだし、傷ついたはずだ。もういいよ。もういいんだ」

(そうなのかな? 本当に……そうなの?)

 私の右手を引いて、兄はゆっくり歩き出す。
 戸惑って固まる私を兄が振り返り、おいで、と言われると、私の足は勝手に歩き出した。
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