一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 彼に見つめられるだけで、彼に触れられるだけで、想いがあふれて止まらなくなる。

「怖いって言ってるのに……」

「どうせ半年は嫌でも夫婦なんだろう。今だけでも受け入れてしまえ」

 覆いかぶさった深冬にソファへ押し倒され、繰り返し唇を甘く愛でられる。

 彼は舌を絡ませずに触れるだけのキスを重ねた。それが余計に私のもどかしさを煽り、もっと深くまで求められたい思いを加速させる。

 受け入れたい気持ちと拒みたい気持ちは同じくらい大きい。

 しかし私は今だけ受け入れて、半年後に笑顔で別れられるような人間ではない。

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