一夜では終われない~ホテル王は愛しい君を娶りたい~
 智秋さんとは以前にも少し話したが、ふたりで話すほどまだ親しくなっていない。

 彼が昼間に言い残したひと言も気になって、自然と肩に力が入った。

 やがて注文したドリンクがテーブルにふたつ並ぶ。

 私のもとに運ばれたオリジナルカクテルは、冬の海を透かしたようなうっすらと青いきれいなドリンクだった。

「それじゃあ、お久し振り記念に乾杯」

「はい、いただきます」

 この奇妙な時間はなんだろうと、やはり疑問に思いながらカクテルで唇を湿らせる。すっとした清涼感のある炭酸が口の中で弾けた。

「それで……すみません。お話ってなんでしょう」

 彼は昼間に現れた時、深冬の怪我について触れた。

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