片恋
延藤くんは、ポカーンとした表情で私を見たあと、プッと吹き出して笑った。


「あははっ、真桜ちゃん、正直すぎ。俺のこと、好きじゃないとか」

「だって、嘘ついたって意味ないし……。知ってたでしょ?」

「まあね」


私と延藤くん、お互いがお互いをよく思っていないことなんか、明白。

だから今さら、取り繕う必要はない。

まさか、楽しそうに笑われるとは思わなかったけど。


「ってことは、俺の歌が好きだってことも、本音なんだ」

「うん、それは本当。すごく感動しちゃったし」

「マジか……。こんなつもりじゃなかったんだけどな」

「……?」
< 199 / 412 >

この作品をシェア

pagetop