片恋
「ごめん、ごめん。朝から嫌な顔見ちゃっただけだから、気にしないで」


成美ちゃんは延藤くんを完全無視して、なぜか私に謝る。


「親友の彼氏を、そこまで毛嫌いする女子ってめずらしいよね」

「そう? ありがとう」

「はは、褒めてないよ」


ふたりとも笑顔で、語尾にハートマークでも付いていそうな会話を、私を挟んで火花をバチバチに散らしながら繰り広げている。


「成美ちゃんはひどいなあ。俺だって、真桜ちゃんの友達とは仲良くしたいって思ってんのに」

「一生思ってれば。あと、成美ちゃんって呼ばないでくれない」

「えー? せっかく可愛い名前なんだし、呼ばせてよ」

「は? キモ」


ますます火花が散っている……。

成美ちゃんが延藤くんの気を引いている隙に、私は教室に入ってくる人のチェックを再開。

伊月くんは、まだみたい。
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