片恋

そんな、ある日の放課後のこと。


『下校時間です。部活の皆さんは、頑張ってください。その他の皆さんは、気をつけて帰ってください。それでは、本日の曲は……』


いつも通り、放課後の放送部員の校内放送を聞きながら、
上履きを履き替えて、昇降口から一歩踏み出した時だった。


「あ……」


ポタッと肌に落ちてきたのは、一粒の雨。

それを皮切りに、無数の雨粒が降り注ぎ、あっという間に地面の色を変えた。


「朝は、いい天気だったんだけどなぁ……」


確か、引き出しに折りたたみ傘を入れてなかったっけ。

でも、二階まで戻るの、ちょっと面倒……。


一度通った道を戻る労力か、雨に濡れる帰り道か。

「……しょうがない」

はあ。と、ため息をひとつ。

ふたつの選択を天秤にかけて、結局、教室に戻ることを選んだ。
< 5 / 412 >

この作品をシェア

pagetop