片恋
「あ、えっと、それは、去年隣の席になって」

「それだけで?」

「ううん。私が、伊月くんが机に忘れた音楽プレーヤーを、勝手に聴いちゃったの……」

「へー。真桜ちゃん、中々やるね」

「悪いことだよね……」


改めて反省しつつ、あの時の伊月くんを思い出す。

彼は、怒るどころか、むしろ……。


「それで次の日に、『聴く?』って、イヤホンを渡してくれたの」

「へぇ?」


延藤くんが、意外そうな表情で首をかしげる。

そして、少しの沈黙のあと、

「それってさ、隣が真桜ちゃん以外の女の子で、真桜ちゃんと同じことしても、そうしたんじゃないの?」


目が覚めるような、私が考えもしなかった指摘に、動きがピタッと止まる。

「たまたま、真桜ちゃんが隣だっただけだよね?」

追い打ちをかけるように突きつけられて、完全に思考が吹き飛んでしまった。
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