エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
翻弄される
昨夜、着の身着のままでここに来た私には、着替えがない。
その夜、午後十時過ぎ。
お風呂に入った後、純平さんのスウェットTシャツを借りることになった。


袖も丈も長く、肩が落ちる。
太腿半分まで隠れて、まるでワンピースのよう。
いわゆる〝彼シャツ〟、とんでもなく、恥ずかしい……!
純平さんは、気のない様子で私を一瞥して、次の瞬間ブッと吹き出した。


「ズボンも貸してほしいです……」

「俺のじゃ大きすぎて、穿くだけ無意味だ。女の服で、そういうのあるだろ。構わないじゃないか」


口に手を遣り、くっくっと笑いながら一蹴してくれる。


「でも、これじゃ心許なくて……」


純平さんが遠慮なくジーッと見ているから、頭のてっぺんから蒸気が噴きそうなほど顔が熱い。
モジモジと膝を擦り合わせ、ずり落ちる肩を押さえながら、もう片方の手でスウェットの裾をグイグイ引っ張り下げた。
すると。


「……ふむ」


どんな思考を働かせたのか、彼が私の手をいきなりグッと掴んだ。


「え?」


行動の意図を探って戸惑う私に、なにかとてつもなく悪い笑みを浮かべる。
私は、怯む間もなく。
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