エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
「お前のプロファイリングも大したことないな。なにもいいことなどない。疫病神を飼っているようなものだ」


ふん、と鼻を鳴らして、呆れた口調で言い捨てる。


「飼ってるって。ペットみたいな言い方ですね」


朝峰が「はは」と苦笑するのを聞いて、無言で顎を摩った。
ペット……確かに。
言い得て妙だが、その感覚は間違っていない。


「そうだな。大目に見て、料理ができる分ちょっと利口なペット……」


俺の言動ですぐに赤くなる顔。
クルクル変化する豊かな表情。
人を疑うことを知らない、純粋な瞳。
飼い主の帰宅に尻尾を振って喜ぶ子犬のようでもあって、ベッドでは俺の嗜虐心を大いにくすぐる立派な大人の女でもあって――。


「…………」


何気なく、自分の手に目を落とした。
すると。


「そんな貴重な証人を囲ってるなら、男をおびき出すのにぜひ協力を」


朝峰が声を潜めて言うのを聞いて、ハッと我に返る。


「え?」


歩の姿を脳裏に描いていたせいで、一瞬なにを言われたかわからない。


「え?って。だから、その彼女に協力を」


朝峰が不審そうに首を傾げるのを見て……。


「あ、ああ。……そうだな」


取ってつけたように返し、スラックスのポケットに手を突っ込んだ。
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