エリート警視正は偽り妻へ愛玩の手を緩めない【極上悪魔なスパダリシリーズ】
【今日は早く上がる。俺が直接迎えに行くから、午後六時に外に出て来い】


純平さんと、一緒に夕食をとれる……!
膨れ上がる期待でワクワクして、午後六時に合わせて帰り支度をしていたら、ちょうど仕事を終えた桃子が、『ちょっと飲みに行かない?』と誘ってくれた。
残念だけど、『また今度』と断るしかない。
ところが、『じゃ、予定合わせて行こうよ』と続けられてしまった。


私は、毎日送り迎えしてもらっていて、自由に寄り道もできない身。
いつになったら、アフターファイブに約束できるようになるだろう?
返事に困っているうちにグランドエントランスに着き、そのまま一緒にビルを出た。
すると、正面玄関に面した広い道路の路肩に停まっていた、黒いベンツの窓が開いた。


『おい』


そこから純平さんが顔を出し、まっすぐ私に呼びかけてきた。
それを見て、桃子が大きく目を見開き、


『え、彼氏!?』


ひっくり返った声をあげた。
純平さんは彼女に気付いていなかった様子で、わずかにふっと眉根を寄せた。


『あ。ええと……』


彼女になんて説明しようか言い淀む私を、視界の端で窺っている。
ふたりから視線を受け、変な汗が背中に伝うのを感じた。
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