過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜

ーーーー1年と数ヶ月前。オレはラピスの最終面接者リストの中にちびすけの名前を見つけて、瞠目した。

まさか、本当に再会出来るとは思っていなかった。



(ちびすけ、よく来たな)



履歴書の志望動機を見て、思わず笑みが溢れた。




オレが高校1年の時、いじめっ子から助けてやったのがきっかけでオレと遥に懐くようになった羽衣。

あの頃のオレは自分の意志とは関係なく、家業のせいで進むべき道がすでに決められていて。

そういうしがらみに嫌気が差して、少し荒れていた時期だった。

遥や仲間たちと随分やんちゃなことをしていたものだが、そんなオレたちを怖がることなく慕ってくる素直で純粋で揶揄い甲斐のある羽衣を、ちびすけと呼んでオレは可愛がっていた。

兄弟のいないオレにとってはついちょっかいを出したくなる歳の離れた妹みたいな存在。



そんな羽衣が竜んところに人質に取られたと連絡が来た時には、大げさでもなんでもなく心臓が止まるかと思った。

オレのせいで巻き込んじまったという後悔と焦りと怒りと。

だが蓋を開けてみれば羽衣が勝手に乗り込んで行っただけだということが分かり、今回はあっさり返してもらえたから良かったもののまたいつこんなことがあるとも限らない。

オレの過保護が始まったのは、この時からだ。
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