過保護な次期社長の甘い罠〜はじめてを、奪われました〜
「ははっ、泣き過ぎ」

「だって……っ!」

私はもう感極まり過ぎてそれ以上言葉にならない。

大我は困ったように笑い、

「まだもう1つ、伝えたいことあるんだけど」

2つの箱を一旦ソファーに置いて、私の頬を包み込み涙を拭ってくれた後、もう1つの小箱を私に差し出した。

パカっと開かれたそこでキラキラと高貴な輝きを放つのは、ダイヤモンドの指輪……。

「……これ……っ!」


「ーー羽衣。今すぐに一緒になりたいとは言わない。でも、オレはもうお前以外考えられない。だからこれからもずっと、オレの側にいて欲しい」


大我の力強くて真摯な言葉が私の鼓膜を震わせる。

その意味を理解した時、必死に止めようとしていた涙があっけなくあふれた。

「……あーあ、本当昔から泣き虫だな、お前は」

そう言って指輪を持っていない方の手で優しく私の涙を拭う。

「誰のせいっ……」

言おうとした文句は大我に吸い込まれていく。

ちゅ、と軽く啄まれた唇が数センチ離れたとき、

「……羽衣、返事は?」

熱のこもった眼差しで真っ直ぐに見つめられる。

「……そんなの、もう決まってるじゃないですか……。私なんかで良ければ喜んで……!」

「私なんかって言うな。オレは羽衣がいいんだ」

「……もう……っ、大我はさっきから……っ!会社できゅんとさせるの禁止です……!」

「ははっ!」

嬉しそうに破顔した大我が私をぎゅっと抱き締める。
< 171 / 180 >

この作品をシェア

pagetop