シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
 ……だからきっと、義父さんのものとも違う。

 目の色そのものは同じでも、そこに込められたものはまるで違う。


 それを確認するように、ギンの目を見つめた。


「キスって言っても、唇以外にもするし……多分、雪華が思ってるほどすぐには終われない」

 ふっくらとした、(つや)やかな唇が言葉を紡ぐ。

 唇を撫でていた指が、わたしの喉を通って鎖骨に落ちる。

「っあ……」

「抱かねぇよ。……でもな?」

 鎖骨をなぞった指が、さらに下へと下がっていく。


「んっ」

「お前の柔らかい所、敏感な場所、髪の毛一本一本から、つま先まで……」

 なぞるように下りていく指が、脇腹のあたりを撫ぜる。

「すべてに触れたいと思ってる。……そうやって触れて、溶けていくお前の顔が見たい。甘くなるお前の声が聞きたい」

 太ももの横を通って、膝裏をかすめるように撫でた手が離れて、また頬へ戻ってきた。


「そういう欲を抑えてキスだけにしてるんだ……拒むなよ」

 欲のこもった目が、わずかに真剣みを帯びてわたしを射抜く。


 言われなくても拒めないことは、わたし自身が分かっていた。

 欲という名の熱が、わたしの心を絡めとって……。

 ドキドキと、胸が痛いほど高鳴る。
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