シュヴァルツ・アプフェル~黒果~魔女と呼ばれた総長はただ1人を所望する
『うーん、これはパスワードが必要』
『でもさっき瑛斗さんたちが持ってきてくれたデータにそれっぽいのあった気がする』
『あ、これだ』

 という声が聞こえたと思ったら、こちらのPC画面に《鏡の間》という文字が打ち込まれる。


「鏡の間? ああ、母さんを映す鏡がキョウってわけか」

 それを見て眞白が皮肉げに呟いた。

「もしかしたらキョウって名前も桔梗からじゃなくて、鏡から付けたのかも知れないな」

 颯介さんがそんな感想を漏らしているうちにエンターが押されて木製のドアのロックがカチャリと外れた。


「よし、これで中に入れる。でも状況が分からないから様子をうかがいながら行くぞ?」

 颯介さんの言葉にわたしたちは頷く。

 それを確認してから彼はドアをゆっくり開けた。



「ああ、これでシロはずっと私のもの。ありがとう金多。あなたが手伝ってくれたおかげよ」

 楽しそうなキョウの声が真っ先に聞こえた。

「……母さんが喜んでくれるなら、俺も嬉しいよ……」

 そして弱々しいけれど、金多くんの声が聞こえて優姫さんが息を呑む。


 シロガネの声は聞こえない。

 うめき声みたいなのも聞こえないから、もしかしたら意識が無い状態なのかも知れない。
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