その星、輝きません!
 クリニックを出てから、ずーっとモヤモヤしている。

 東京に戻り、運転手が運転する車で自宅から会社に秘書と一緒に向かう。

 何故だ?
 何故、俺はクリニックになんか行ったんだ。

 笑いたかった? 一瞬でも思った自分にくだらないと呆れる。
 別に彼女に会えなかったから、何だと言うのだ……

 でも彼女は何故、居なかった?
 急用ってなんだよ?
 俺を避けたのか?
 本気で気になるってなんだ?

「何故、居なかったんだ?」

 思わず、口から漏れてしまった。

「社長。どなたか不在でしたか?」

 助手席の秘書の山下が、後部座席に顔を向け言った。

「いや、たいした事じゃない」

 俺は、窓の外へ目を向けた。
夏も、もう終わりだと言うのに、陽射しは強く、日傘や帽子姿の人が目立つ。


 ううん?
 えっ?

「止めろ!」

「は、はい」

 運転手が返事をすると、車はゆっくりと路肩に寄り停車した。

「社長、どうされました?」


 山下の驚いた声が聞こえたが、俺は車のドアを開けると飛び出した。

 間違いない!
 目の前を歩く女性の、腕を掴んだ。


「おい!」

「きゃっ」

 
 声を上げて、振り向いた彼女は、俺を見ると目を見開いて固まった。

 しばらく時間が止まっていたと思う……
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