その星、輝きません!
 見慣れない店の中を覗くと、カウンターの片隅に座る良太と目が合った。良太が目で合図する方を見た。

「ねえ? 少しくらいお話しに付き合ってくれてもいいじゃないですかぁ?」

 バーカウンターに座る、くねくねした若いお姉さんの後ろ姿が見える。

「すごく素敵な時計ですよねぇ? お仕事は何をされているんですかぁ?」

「私達と何処か行きません?」

 二人の女性に囲まれている、スーツ姿の男性の姿が見えた。

 後ろ姿でも誰だかわかる。

「悪いが、人と待ち合わせていると、先ほどから何回も言っているじゃないか」

「えー。でも、まだ来ないじゃない。私達、そんなに悪くないでしょ? あなたと並んでいても、おかしくはないわ?」

 なんか、面倒臭そうな女達に絡まれているな。並んでもおかしくないとか、誰の意見か聞きたい。


 良太になんとかしろと目で合図するが、両手を合わせてこっちを見ている。

 はあっー。私にどうしろって言うのよ。


 横の窓ガラスで、自分の姿を確認する。髪の毛を手で整えた。
 さあ、どうしようか?

 コツコツとヒールを鳴らして、彼の元へ近づく。今日に限って、ヒールなんて履いている自分に、笑えてくる。


 彼の斜め後ろに、姿勢を正してすっと立った。


「失礼します。社長、そろそろ、お時間です」

 出来る限り丁寧に、そして凛々しく……


 後ろを振り向いた彼が、一瞬目を見開いて驚いたのが分かった。でも、すぐにふっと顔をゆるませた。


「ああ」

 彼は、すっと立ち上がった。

「ええ~ 私達はどうなるのよ? 連絡先ぐらい教えて下いよ~」

 まじまじ顔を見るとまだ若い。全く、我儘なお嬢様達だ。

「申し訳ありません。社長は個人的な連絡は致しません」

 一応頭を下げる。

「あんたには聞いていないわよ!

 私は、彼女達に目を向けると、ギロリと睨んだ。

「失礼ですが、社長は、あなた方が相手の出来るような方ではありません。これ以上、無礼があれば、表で待っている者達を呼ぶ事になりますが」

 もちろん、待っている者などいないが、急に彼女達の顔が青ざめた。

「えっ。分かったわよ……」


「失礼します」

 私は、姿勢を正して頭を下げると、何も言わずに出口へ向かう彼の後ろに付いて歩いた。

 途中から、良太が後ろを付いて来た。なんとなく、サマになっている。
 多分、良太がビシッとスーツ姿をきめているからだからだろう。
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