その星、輝きません!
 ジェット機で山下と二人、羽田へと向かった。

「彼女とあまりしゃべるな。綺麗だとか、気を引きやがって」

「はい? 私は、秘書として挨拶をしたまでです。本当にお綺麗だから言っただけで、女性への礼儀です」

「ふんっ 何が礼儀だ」


「私のお陰で、連絡先の交換が出来たのでは? 私を味方につけた方が何かとご都合が良いかとおもいますが?」

 山下は、横眼で俺を見た。


「チッ」

「舌打ちなどして、はしたない。ところで、沖縄はいかがでしたか?」


「そりゃあ、俺が準備をしたんだ。完璧だ」


「楽しめたのなら、何よりです」

「ああ。彼女にプロポーズした」

 俺は腕を組み、ジェット機の中の完璧なシュチュエーションを思い起こした。


「はあ? それで、鈴橋さんは?」


 そうだ。彼女の答えが中途半端なまま到着してしまったのだ。


「無理だとさ。俺のどこが無理なんだ。全て、完璧だったのに」


「社長…… お言葉ですが、振られたって事ですよね?」

「え? 振られた…… 俺が……」

 一気に身体の力が抜けた……
 いやいや、嫌いだとは言われてない。バサバサと頭を左右に振った。


「どうしてまた急に? プロポーズなど……」


「一緒にいたら、もっと一緒に居たいと思った。ずっと一緒に居たいと思った」


「社長の気持ちは良く分かりますが。まずは、お付き合いから始めるとか? ちゃんと好意を持っている事を伝えましたか? きちんと言葉にしないと伝わらない事もあるんです」


「ああ? 好意?」


 彼女に俺の気持ちが伝わってないって事なのか? 
 こんななに、彼女の事で頭がいっぱいなのに。伝わらないとは、どうしてなんだ?

 明日からアメリカで、しばらく会えないのに、どうしたらいいのか?


 俺は、真っ暗な窓の外をみながら、何も見えない迷路の中に迷いこんでしまった様な気分になった。
 ふと、下の方に見える街のネオンが星のように光っていた。


 彼女は無事に家に着いたのだろうか? 俺と居た時間を、少しでも思い出すだろうか?


 今度は、どんな表情を見せてくれるのだろうか? 笑った顔でも、怒った顔でもいい。
 隣で一緒に過ごせるのなら……
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