その星、輝きません!
 「それで、あんたは財布男の事をどう思っているの?」

 大まかな沖縄での話を聞き終えた薫の一言に、耳を疑った。

「誰がどう見たって、住む世界が違うわよ。あり得ない」

 第一に、彼をどう思っているかなんて、考えもしなかった。


「住む世界なんてどうでもいい事なんだけどね」

 薫は独り言のように言っているが、あの世界を知ったら流石にドン引きすると思う。


「このまま、ホイホイ彼に着いて行ったら、お金目当ての女に見られるだけじゃない」

「えっ? 金目当てなんだからいいじゃん」

「違うでしょ!」

 私は、薫を睨んだ。


「だって、いつもお金お金って言ってるし。患者さんからの差し入れは、断りながら手が出てるし。金と物に弱いんだからさ。けっこういい思いしたんでしょ」


「いい思いなんてレベルじゃない。桁外れよ。理解出来ない」


「それならなおさら、普通じゃ経験できない事出来たんだからよかったじゃない。何をそんなに困り果てているのよ?」



 周りの皆が仕事をするふをして、片耳立てているのは知っている。こちらを見ている薫を手招きした。近づいてきた薫の耳もとに小さな声で言った。


「結婚しようって、言われたのよ。冗談かもしれないんだけど……」

「ええ!!! 結婚!!!!」


 薫のすっとんきょうな声が、クリニックに響き渡った。一斉にスタッフがこっちを振り向いた。どうして呼びつけてまで、耳元で言ったのか理解して欲しい。


「鈴橋さん結婚するんですか?」

 あかねをはじめ、皆が興味の眼差しを向けてくる。


「するわけないじゃない」

 首を大きく振った。


「まさか、あの財布男ですか?」

 あかねが、いつの間にか真横に座っていた。


「だから、しないってば!」


 全否定に必死になっていると、ポケットのスマホが震えた。
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